Gevoの3年間CDR供給契約が示す、BECCSクレジット市場の買い手主導への転換

Gevoの3年間CDR供給契約が示す、BECCSクレジット市場の買い手主導への転換

ニュースの概要

米国のバイオ燃料企業Gevoが、カーボンマネジメントのプラットフォームを運営するCEEZERと、二酸化炭素除去(CDR)クレジットの供給契約を結んだ。期間は2029年までの3年間である。対象は、ノースダコタ州のエタノール工場で出る生物由来のCO2を回収し、地中に恒久的に貯留する事業から生まれるクレジットだ。契約量は数万トン規模とされる。CEEZERは企業の購入を仲介する立場にあり、需要側の声をまとめて供給元に届ける役割を担う。単発の取引ではなく、複数年の供給枠を先に固めた点が特徴である。この仕組みは、BECCS(=バイオ由来CO2の回収と貯留)の事業性を支える材料になりうる。

引用元: Gevo、CEEZERと3年間の二酸化炭素除去クレジット供給契約を締結(Yahoo Finance / GlobeNewswire)

分析・見解

数万トンでも「3年固定」に意味がある理由

数万トンという量は、世界の年間排出量から見ればごく小さい。だが注目すべきは量より期間である。CDRクレジットは長く、設備が建つ前の「予約販売」で資金を集めてきた。完成するかわからない案件に買い手がつくかどうかが、事業者の最大の悩みだった。3年という供給期間が決まれば、貯留井戸や配管への投資を金融機関に説明しやすくなる。

今回の元になるのはエタノール工場だ。発酵の工程では、純度の高いCO2が自然に出る。これを集める費用は、一般の工場排ガスから集めるより低く済む。BECCSの中でも、エタノール由来は費用面で先行しやすい分野だといえる。

買い手が求めるのは安さより「消えない」証明

除去クレジットには、大きく二つの種類がある。森林のように自然の力で吸収するものと、機械や地層で閉じ込めるものだ。前者は山火事で炭素が大気に戻るおそれがある。後者は地中に閉じ込めるため、数百年から数千年単位の保持が見込める。価格は高いが、企業の開示で説明しやすい。

欧州の規制や自主的な基準づくりが進むなか、「削減」と「除去」を分けて報告する流れが強まっている。大手IT企業が除去クレジットの長期購入を相次いで結んできたのも、この流れの一部だ。今回も同じ方向の動きとして読める。

燃料会社が除去を第二の商品に変える動き

ここが本件の見どころだと考える。Gevoの本業はバイオ燃料である。燃料は価格が原油や穀物に左右されやすい。一方、除去クレジットは燃料づくりの副産物として生まれ、価格は別の要因で動く。収益の柱が二本になれば、景気や原料価格の波を和らげられる。

似た例が農業にある。収穫物に加えて、土壌に蓄えた炭素量を売る農家が出てきた。本業の横に環境価値という第二の売り物を置く発想は共通している。ただし農業では測定の手間が重荷になった。BECCSは配管で量を測れるため、測定の信頼性では有利である。

残るリスクは貯留の許認可と買い手の継続力

弱点もある。地中貯留には、井戸の許可と長期の監視が要る。米国では州ごとに手続きが異なる。ノースダコタ州は州が許可権限を持っており、手続きを進めやすいとされる。ここは追い風だ。ただし予定どおりに進まなければ納期が遅れ、契約の価値が下がる。

もう一つは、買い手の景気である。除去クレジットは、利益が出ている企業の「余裕」で買われる面がある。業績が悪化すれば、真っ先に予算が削られかねない。3年契約がその揺れにどこまで耐えるかは、これから確かめられる。

ビジネスへの影響

調達担当は量より契約の形を見直したい

脱炭素の担当者にとって、今回の契約は調達の型を示している。単年で少量を買う方式は、価格が上下しやすく、供給も不安定になりやすい。数年にわたり量を押さえておけば、将来の値上がりに備えられる。まずは自社の排出量のうち、どの部分を除去で埋めるのかを決めたい。全部を除去でまかなう必要はなく、削減が難しい残りの部分に絞るのが現実的だ。

契約の際は、貯留場所、測定方法、第三者の検証の三点を確認する。クレジットが無効になった場合の補填条件も、契約書に入れておくと安心だ。

供給側の企業が学べる三つの動き

エタノールや食品、製紙など、発酵や燃焼で純度の高いCO2が出る工場は多い。こうした事業者にとって、Gevoの動きは参考になる。まず、排出するCO2の量と純度を数字で把握する。次に、近くに貯留に適した地層があるかを調べる。最後に、仲介事業者と早めに話し、買い手の要望を聞き取る。

日本でも、バイオマス発電所や酒造、バイオエタノールの工場が候補になりうる。ただし国内は貯留地の整備が途上のため、海外の貯留地との組み合わせも含めて検討することになる。

投資や提携を考える人が確認したい指標

見るべき数字は三つある。契約済みの量が、設備の年間能力の何割を占めるか。1トンあたりの価格が、貯留や輸送の費用を上回っているか。そして、実際に貯留を始めた実績がどれだけ積み上がっているかだ。発表だけでは収益にならない。引き渡しが始まって初めて売上になるため、四半期ごとの進み具合を追うのが確実である。

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